2014年5月25日日曜日

Interactive Nightmares: A History of Video Game Horror

Mark Butler, 『Interactive Nightmares: A History of Video Game Horror』(2011)のメモ。
http://www.amazon.co.jp/Interactive-Nightmares-History-Video-Horror-ebook/dp/B005DRXS22

ホラー小説や映画にないホラーゲームが持つインタラクティブ性などの要素と、それがオーディエンスに与える本物の感情=恐怖を考察しながら、ホラーゲームの歴史と将来を論述しています。近年の技術進化は、表現の現実性や没入性を強化しています。またゲームでは、プレイヤーは、小説や映画のようにキャラクターの恐怖を体験するのではな く、非日常の世界を自ら歩き回る必要があります。著者は、もっとも素晴らしいホラーゲームはもっとも偉大なホラー小説や映画より恐ろしく、このジャンルが達成したことはビデオゲー ム産業がもっとも誇るべきことである、と冒頭で説明しています。

ホラー・ブームの中で制作された「Hauted House」(1982)、1980年代におけるポイント&クリック(マウスを動かしクリック)型のアドベンチャーゲームの隆盛、「バイオハザード」(1996)や「サイレントヒル」(1999)、「零」(2001)など3D表現を用い心理的恐怖を重視する日本製サバイバルホラーの衝撃、「バイオハザード4」(2005)から始まる大手デベロッパの戦闘中心ホラーTPS・FPSの人気と、インディーや日本企業のサバイバルホラーへの回帰、小説・映画・テレビへのゲームの影響が、詳細に語られています。

「Hauted House」の登場から30年にわたり、ホラーゲームは雰囲気、表現、リアリティの面で著しく進化してきました。 同作品の1980年代のスリルは、「Amnesia: The Dark Descent」(2010)のような近年のゲームとは、スタイルや内容の面で異なっています。しかし、両者には驚くほど多くの共通点があると著者は主張します。恐怖や不安(uncertainty)を生み出すための中心的しかけとして暗闇を使う点、 無力なプレイヤーが醜怪な敵から逃げようとする点、縁起の悪い、悪意のある家が舞台である点、などです。

暗闇、不安、モンスター、狂気、孤独をともなうホラーゲームプレイの中心的魅力は将来も存在し、心理学的恐怖の遺産は独立系ゲーム制作者が受け継いでいくものであり、特定のアイデアはこのジャンルでは相変わらず強力で、持続し一貫性の感覚をもたらし、過去・現在・未来のタイトルの明確なつながりを示していると説明しています。そしてホラーゲームプレイの将来の方向性の1つとしてモーションコントロールを挙げつつ、このジャンルの力と可能性を確信しているとまとめています。

本書はKindle向けにだけ出版されている電子書籍ですが(300円ほどで購入可能)、日本にはおそらく類書がない水準で、世界中で制作・販売されたホラーゲームの特徴とその歴史を詳しく説明しています。また、英語圏の研究にありがちな、欧米ゲームだけを中心に取り扱う傾向がありません(さすがに和製ADVには触れてませんが)。心理学的恐怖を重視し、備えもなく強力な武器ももたない主人公が悪夢の世界に入り込む日本のサバイバルホラーへの愛に溢れ、また「バイオハザード」制作者の三上さんや「サイレントヒル」「SIREN」制作者の外山さんへの敬意が強く表明されており、日本の読者が読んでも興味深い本です。「バイオハザード」がサスペンスやパニック、攻撃の恐れなどを利用する傾向があったのに対し、「サイレントヒル」がより根源的・原始的な人間の心理的恐怖に入り込んでいった、という分析(4章)などは、表現上の革新を考察する手がかりになるでしょう。

近年はホラーゲームの研究書がいくつか出版されていますが、これらは映画研究の枠組を用いているため、ゲーム内の物語やカットシーンを中心に分析する傾向があります(たとえば、Bernard Perron他, 『Horror Video Games: Essays on the Fusion of Fear and Play』)。これに対し本書は、ホラーゲームのキャラクターや舞台(スティーヴン・キングの概念「the Bad Place」)に加え、メカニクス(キャラクターの物理的無力さ(足の遅さ、弱さ等)、資源の少なさ(武器、アイテム等))にも注目した分析を行っています。

本書以降に本格的に登場したKinectやオキュラスリフトのような新技術は、ホラーゲームに新たな可能性をもたらしています。ホラーゲームに関心がある人々は、本書を利用し討論しながら、同ジャンルの内容、歴史、未来を考察していくと良いかも知れません。

以下、目次です。引き続き、誤訳はご容赦を。

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目次:
1章 暗がりからの出現
2章 ポイントとたじろぎ;  射撃と叫び
3章 「これは何だ?」 サバイバルホラーの誕生
4章 静かな表現(The Silent Treatment)
5章 システムへの衝撃
6章 盛りだくさんのアクション: ホラーゲームの変節
7章 新しい血
8章 聖域(asylum)の継承

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