2015年12月29日火曜日

ビデオゲーム産業の世界動向――ビジネスモデルのイノベーションと産業周辺の新潮流

一般財団法人マルチメディア振興センターの研究活動の一環として、『ビデオゲーム産業の世界動向――ビジネスモデルのイノベーションと産業周辺の新潮流』という調査報告書を作成しました。序章、第1章~第4章、終章を私が担当しています。また、岡山理科大学の山根先生に、米国と日本のゲーム教育について執筆して頂いています。報告書のサマリーと目次につきましては、下記をご覧下さい。

財団の会員向けの報告書ですが、有償販売も行ってます。購入を希望される方は下記ページをご確認下さい。
http://www.fmmc.or.jp/report/publicresearch.html?id=1867

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■エグゼクティブ サマリー

 ビデオゲーム産業は、ICTとの結びつきを通して発展を続けている。本報告書の第一の目的は、ビデオゲーム世界市場拡大の要因と考えられる、ICTと結びついたビジネスモデルのイノベーションと、企業による新しいビジネスモデルの採用・利用について解説することである。第二の目的は、ビデオゲーム産業周辺での新潮流を解説することである。ビデオゲームを「見て楽しむ」活動の日常化の規模とそれに関連する新しい産業、及び大学におけるゲーム開発者教育の実態を解説する。世界のビデオゲーム産業や産業周辺の動向を、英文の報告書などを参照しながら説明することにより、日本のICT・ゲーム事業者の今後の事業活動にも参考になると考えられる情報と知見、後続のゲーム産業研究の発展に有用な枠組とデータを提出する点が、本報告書の意義である。

 序章では、本報告書の目的と背景、概要を説明する。ビデオゲーム産業が国内・世界で発展を続けていること、産業周辺で新しい活動、職業、産業、教育体制が生まれていることを指摘する。そして、「ビデオゲーム産業におけるビジネスモデルのイノベーション」と「産業周辺の新潮流」という現在ビデオゲーム産業内外で起きている大きな変化を調査することが、本報告書の目的であることを説明する。

 第1章から第3章では、本研究の大きな二つのテーマのうち、ICTとの結びつきによって生まれた「ビデオゲーム産業におけるビジネスモデルのイノベーション」について解説する。

 第1章では、1970年代から1990年代までのゲーム産業の主流のビジネスモデルであった「伝統的モデル」、ICT普及と共に1990年代末以降に確立した「新モデル」、流通や価格の面で伝統的モデルと新モデルを組み合わせた「ハイブリッドモデル」について、ゲーム産業におけるビジネスモデルを分析した先行研究を整理しながら説明する。

 第2章では、「新モデル」を採用するビデオゲーム産業の典型として、北欧のPC・モバイルゲーム産業の動向を説明する。制作・販売に多額の資本が必要なコンソールゲーム市場には参入できなかった北欧の中小の新興ゲーム会社が、「新モデル」や人材・ノウハウ等の活用や、環境的要因によって、PC・モバイルゲーム市場で大きな売上・利益を獲得していることを説明する。

 第3章では、「ハイブリッドモデル」を採用するビデオゲーム産業の典型として、日本のコンソールゲーム産業の動向を説明する。コンソール製造会社のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と任天堂の事業に注目し、これらがハイブリッドモデルによってどのように収益を得ているかを説明する。

 次に第4章と第5章では、本研究のもう一つの大きなテーマである「ビデオゲーム産業周辺の新潮流」を解説する。

 第4章では、ICTの普及によって日常化した、ゲームの新しい楽しみ方や事業である「eスポーツ」と「ゲーム実況」の動向を解説する。米国、欧州、韓国などでのブロードバンド網整備や企業・政府の取組み、「ゲームプレイを見せたい/見たい」「ゲームについてコミュニケーションしたい」「ゲームの楽しさの経験をシェアしたい」というプレイヤーの関心が結びつき、現在の「eスポーツ」「ゲーム実況」の人気があることを説明する。

 第5章では、ゲーム産業成長の条件である人材育成教育について説明する。ゲーム開発者教育分野で先行する米国に注目し、先進校の取組みの共有や、産学連携、カリキュラムの標準化などによって、米国の大学が教育の実践性を高めていることを解説する。

 最後に終章では、本報告書の知見を総括し、今後の産業の展望を提示する。

■目次
序章 目的と概要
1 目的と背景
2 概要

第1章 ビデオゲーム産業の3つのビジネスモデル
1 はじめに
2 伝統的モデル
3 新モデル
3-1 特徴
3-2 「フリー・トゥー・プレイ(F2P)」方式の特徴
3-3 新モデルでなぜ売上と利益が得られるのか?
4 ハイブリッドモデル
5 結論

第2章 「新モデル」を活かすPC・モバイルゲーム産業――北欧の取組み
1 はじめに
2 企業の動向
2-1 フィンランド
2-2 スウェーデン
2-3 デンマーク
3 成長の要因(1)――新モデルと人材・ノウハウ・制作ツールの活用
4 成長の要因(2)――環境的要因
5 結論

第3章 「ハイブリッドモデル」を活かすコンソールゲーム産業――日本の取組み
1 はじめに
2 コンソールとICT
3 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)
3-1 ゲーム&ネットワークサービスの状況
3-2 PS3の課題とPS4の取組み
3-3 ハードコア層向けの戦略――「ゲーム」の提供
3-4 カジュアル層向けの戦略――「エンタテインメント」の提供
4 任天堂
4-1 売上の現状とWii U及びニンテンドー3DSの課題
4-2 「新モデル利用」と「スマート端末へのゲーム提供」への従来の姿勢
4-3 新戦略――「IP活用」「スマート端末へのゲーム提供とF2P活用」「娯楽の再定義と新事業参入」
5 結論

第4章 ゲームを「見て楽しむ」活動の日常化・職業化・産業化――eスポーツとゲーム実況
1 はじめに
2 eスポーツ
2-1 歴史
2-2 競技対象となるゲーム
2-3 人気の規模
2-4 日本の動向
3 ゲーム実況
4 結論

第5章 大学のゲーム開発者教育――北米と日本の取組み
1 はじめに
2 北米でのゲーム教育制度の形成
2-1 教育機関の傾向とランキング
2-2 西欧・カナダとの比較
3 大学の研究対象としてのゲーム
3-1 1990年代の起源
3-2 産学連携を埋め込んだ教育
3-3 教育プログラムの相互評価: 2002-2006
3-4 コンピュータサイエンス教育の変革
3-5 学会外への展開
4 考察および日本の動向
4-1 考察
4-2 日本の動向
4-3 世界的な競争における課題
5 おわりに

終章 まとめと展望
1 全体のまとめ
2 今後の展望――新たな「ゲーム産業戦略」の策定・実行に向けて

■執筆担当
・序章、第1章~第4章、終章
一般財団法人マルチメディア振興センター 情報通信研究部 上席研究員 七邊信重

・第5章
岡山理科大学 総合情報学部 教員 山根信二

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