2014年7月20日日曜日

Ludoliteracy: Defining, Understanding, and Supporting Games Education

Jose P. Zagal, 『Ludoliteracy: Defining, Understanding, and Supporting Games Education』(Lulu.com, 2010)のメモ。
http://press.etc.cmu.edu/content/ludoliteracy-defining-understanding-and-supporting-games-education

ビデオゲームの教育(Game Education)に関する著作。ゲーム教育は、学生が授業を楽しむし、ゲームについての経験があるので簡単なようだけど、実際には驚くほど複雑なものであると語られています。本書では、学生がゲーム教育の場で直面する課題や困難を調査しながら、ゲームを理解するとはどういうことか、ゲームリテラシーとは何か、ということを検討していきます。なお著者によれば、ゲームリテラシーには「ゲームをプレイする力」「ゲームに関する意味を理解する力」「ゲームを作る力」の三つがあります。本書では、これまで十分に考察されてこなかった二つ目の意味のゲームリテラシーの向上に焦点が当てられています。

著者は、ゲーム教育の受講者はゲームについての素朴な理解を抱えており、これがゲームの要素や要素間の関係(構造)に関する深い理解を妨げている、と説明しています。こうした学生には次のような特徴があります。
 1)ゲームをうまくプレイできることと詳しく説明できることを、混同している。
 2)ゲームを表面的に説明する。
    たとえば、ゲームの表現上の特徴(グラフィックやマップの多さ)、プレイ感覚だけを語る。
 3)誰もがゲームを同じように体験すると考える。
 4)特定ジャンルのゲームだけに精通している。ゲームについての狭い視点を持っている。
 5)すでにプレイしたゲームからは何も学べないと考える。

こうした問題を解決するため、著者は、学習科学と二つのツールに依拠して、学生が自身のゲーム経験から多くの知識を引き出すこと、ゲーム経験からより深い理解に到達すること、抽象的概念を獲得することを支援しています。そうしたツールの一つが「Game Log」というゲームプレイ活動の日記を書くためのBlogで、もう一つが「Game Ontology Wiki」というゲームの要素や構造を分析するためのWikiです。これらのツールが、自身のゲーム理解(の狭さ、浅さ)の客観的認識や、ゲーム内の要素間の関係や他のゲームとの関係、他文化との関係の理解を促し、またゲーム研究共同体への学生の参加を支援する、と説明しています。

評者はこれまで、大学でゲームの講義をしていて感じる学生の課題が日本に固有のもの(日本の学生のゲームリテラシーの低さ)かと思っていましたが、米国の学生とも共通していることが分かりました。学生のゲーム経験をいかに理論的な考察に結びつけるか、ゲーム研究と教育をどうつなぐか、を考えている教育者の方にはおすすめの著作です。

Zagalさんは、チリ出身のゲームデザイナー、研究者、教育者で、現在は米国のデポール大学の助教(※)、DiGRAの副会長です。国際会議DiGRA2007では東京に来日され、秋葉原へのエクスカーションツアーにも参加されてました。本書のもとになった発表原稿「ゲーマーから研究者へ—ゲーム研究指導の難題—」は、翻訳され、DiGRA JAPAN学会誌の「DiGRA2007特集」に掲載されていますので、関心のある方は読まれると良いかと思います。 
http://facsrv.cs.depaul.edu/~jzagal/
http://www.cdm.depaul.edu/people/pages/facultyinfo.aspx?fid=519
http://digrajapan.org/?page_id=338

(追記)デポール大学の准教授と記してましたが助教であるとのことです。また、2013年からユタ大学の客員教授になられているそうです。山根さん、ご指摘有り難うございました!
http://eae.utah.edu/eae-welcomes-visiting-professor-jose-zagal/

以下、目次です。引き続き、誤訳はご容赦を。

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謝辞
序文
第1章 はじめに
第2章 ゲーム研究の最先端
第3章 ゲームリテラシーと学習
第4章 ゲームについての新参者の理解
第5章 ブログを通しての理解の支援
第6章 ゲーム研究に貢献しながら、ゲームを理解すること
第7章 考察と結論
文献
図表

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