2015年8月16日日曜日

A Casual Revolution: Reinventing Video Games and Their Players

Jesper Juul, 『A Casual Revolution: Reinventing Video Games and Their Players』(The MIT Press, 2010)のメモ。
https://mitpress.mit.edu/books/casual-revolution

 任天堂の「Wii」「ニンテンドーDS」というゲーム機が登場した2000年代半ば以降、ビデオゲームのプレイヤーは爆発的に増加しています。スウェーデンのエリクソン消費者研究所(Ericsson ConsumerLab)は、2014年に発表した報告書『ゲームの新しい遊び方――ビデオゲームプレイ行動の変化の探究』の中で、16~59歳の8,000名へのオンライン調査に基づき、韓国の回答者の85%、米国の75%、ブラジルの53%がビデオゲームをプレイしていること、韓国プレイヤーの半数が40歳以上、米国プレイヤーの半数が34歳以上であることなどを明らかにし、ゲームプレイが主流文化として社会的により受け入れられるようになっている、と説明しています。

 こうした変化は、現在では当たり前のように捉えられていますが、「なぜ今になって、これほど多くの人びとがゲームを自宅や電車内などで遊び始めたのか?」という問いを改めて検討してみると、この問いに説得的な答えを出すことは、思ったより難しいことが分かります。本書は、この問いに正面から向き合い、プレイヤーや開発者へのアンケート・インタビュー調査と、著者ユールが構築した独自の概念(#)に基づいて、この問いに解を提供することを試みています。

(#)「Half Real」で提示されたルールとフィクションの分類や、ビデオゲームのプレイに関わる空間の3類型、ビデオゲームプレイにおける「コミュニケーション」の意味、カジュアルゲームの2類型など。

 「なぜ今になって、これほど多くの人びとがビデオゲームを遊び始めたのか?」という問いに対し、ユールは、人びとがゲームをプレイするために必要なさまざまな条件――時間・空間・プレイ相手・知識・ハードウェアなど――を柔軟に満たす「カジュアルゲーム」が多数登場したためである、という回答を提示しています。

 ユールによれば、「カジュアルゲーム」とは、「簡単に遊び方を学べ、非常に多くのプレイヤーの生活と調和し、多様な状況で機能するゲーム」です(5頁)。具体例として、「Wii Sports」「Guitar Hero」「Bejeweled 」などが挙げられています。彼は、カジュアルゲームが満たすべき構成要素として、
 ・[明るくて親しみやすい]フィクション
 ・遊びやすさ
 ・中断可能性
 ・難しさと罰[の少なさ]
 ・報酬の多さ
の5つを挙げ、「チェス」「Guitar Hero」「Lumines Live!」「World of Warcraft」などのゲームがカジュアルゲームとしての基準を満たしているか、を分析しています。

 また、上で挙げた、カジュアルゲームの5要素を分析した章とは別の箇所では、プレイヤーが目的を自分で決めたり、ゲーム内で提示された目的を無視できるため、より「カジュアル」に遊ぶことが出来るビデオゲーム――たとえば、「Sims2」や「Grand Theft Auto」、本書以降の作品であれば「Minecraft」――の登場の意味についても分析しています。

 本書の刊行年は2010年であり、扱われているゲームも、WiiやPS3、ウェブブラウザで遊ぶゲームが主であるため、若干の古さを感じさせるかもしれません。しかし、SNS上で遊べる「ソーシャルゲーム」や、スマートフォンやタブレットで遊べる「モバイルゲーム」の隆盛が、本書の刊行後であったことを考える時、本書が提示した仮説や分析枠組が驚くほど妥当であったことを、読者は理解することができます。2000年代後半に起きた、ビデオゲームのデザインやそれをプレイする人びとのイメージの変化(=カジュアル革命)を考察した本書は、今なおビデオゲーム産業・文化やその歴史を記述・説明するためにも欠かせない視点を提供しています。また、開発者へのインタビュー調査も踏まえて書かれた本書の知見は、カジュアルゲームを開発・販売する企業の方にも有益であるように思います。

「本書の題名であるカジュアル革命は、ビデオゲームの歴史における大発見(breakthrough)の時代である。これは初期のビデオゲームの単純さが再発見された時代である。さらに、新しい柔軟なデザインは、プレイヤーの生活にビデオゲームを調和させている。ビデオゲームは再創造され、ゲームをプレイする人びとについてのイメージも再創造されている。これは、すべての人びとがビデオゲームプレイヤーでありうることが認識されている時代である。」(2頁)

 なお、 評者は本書の枠組を用いて、『妖怪ウォッチが10倍楽しくなる本』で、ゲーム版「妖怪ウォッチ」の仕組みとその魅力、同作品の開発・販売会社であるレベルファイブの「カジュアルゲーム戦略」を分析しています。『カジュアル革命』の内容もわかりやすく説明されていますので、宜しければ読んでみてください(宣伝w)。


以下、目次です。誤訳はご容赦を。

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謝辞
第1章 カジュアル革命
第2章 カジュアルとは何か?
第3章 あなたが以前にプレイしたすべてのゲーム
第4章 イノベーションとクローン: ダウンロード可能なカジュアルゲームのゆるやかな進化
第5章 プレイヤー空間への帰還: 模倣的インターフェースゲームの成功
第6章 社会的意味と社会的ゲーム
第7章 ハードコアゲームにおけるカジュアルなプレイ
第8章 プレイヤー、開発者、ビデオゲームの未来
付録A; プレイヤー調査
付録B: プレイヤーの物語
付録C: 開発者へのインタビュー

文献
索引

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