2016年9月3日土曜日

『ポケモンGO』ブームの分析(2016年8月時点)

今年7月にリリースされ、世界中で人気の『ポケモンGO』のブームの要因と魅力について、メディアの方の取材を受けました。

『ポケモンGO』ブームは続く?ゲーム研究者が語る大ヒットの要因と可能性」『教えて!gooウォッチ』
「『ポケモンGO』はなぜヒットした?」『SBS静岡放送「IPPO」』(ラジオ番組)
「ポケモンGO 熱狂去って新たなステージへ」『NHKニュース』 (追記)
追跡2016 「ポケGO」県内でも社会現象 事故多発、対策が課題 世代超え広がる交流」『山梨日日新聞』 (追記)

前者については、8月上旬に、指定して頂いた分量の3倍程の回答を書いて、担当者の方に編集のお手間をおかけしてしまいました(スミマセン…)。その後、すでに1か月が過ぎ、ゲーム自体がアップデートされたり、開発サイドからの情報や分析記事がかなり出てきています。また、上の記事が公開された後で、ゲーム研究者や開発者の方などとお話しして、新しい知見を得ることができました。

これらに基づいて、『ポケモンGO』や位置情報・ARゲームについてもう少し調べてみようと考えているのですが、その前に、区切りとして、最初に書いた原稿をブログに投稿します。説明を加えたい箇所もありますが、今後の研究にそのアイデアを反映させていきたいと思います。

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■『ポケモンGO』ブームの背景
日本と海外での『ポケモンGO』の人気の要因は、いくつか考えられます。一つは、世界で2億本以上のゲームが販売された『ポケットモンスター』のシリーズ作品であったことです。現実世界で『ポケモン』のモンスターに再び会えるということが、この作品で育った10代から30代の世界中の「ミレニアル世代」をひきつけました。さらに、ミレニアル世代を中心とする多くのプレイヤーが、SNSなどで『ポケモンGO』の感想や写真、動画を投稿し、より多くの人の興味を引きつけたことが、現在の爆発的ブームを生みだす要因の一つになったものと考えられます。

第二に、位置情報や拡張現実(AR、現実世界に情報を重ねる技術)が、ほとんどのプレイヤーにとって新しい体験であったことです。現実とゲームが結びつくことの新しさが、プレイヤーにプレイをはじめさせたり、継続させる魅力になっているのではないでしょうか。

第三に、このゲームが気軽に楽しめる「カジュアルゲーム」であることです。『ポケモンGO』は、心地よくて親しみやすい明るい世界(可愛らしいモンスター、草原や空を基調としたマップ)で、ビデオゲームの知識があまりないプレイヤーでも楽しく遊べるゲームになっています。一部のコアプレイヤーだけでなく、多くのプレイヤーが楽しめるゲームだったことが、このゲームのブームの要因の一つと言えそうです。

あともう一つは、単純に、夏休みにうまく合わせたことでしょうね。朝から夜遅くまでゲームを屋外でプレイする人びとの写真や動画自体が、今まで人類が誰も見たことがないもので、人目を引くコンテンツになりました。

■問題
日本だけでなく海外でも、このゲームが起こしている現象が問題になっています。たとえば、歩きスマホによる事故や、立入禁止場所や危険な場所への侵入、不適切な場所でのポケモンの出現などです。また、プライバシーやセキュリティ、子どもへの広告、通信データ量の増大なども、海外では注目を集めています。米国の議員や消費者団体は、これらの問題について開発会社に質問状を送ったり、商業活動を制限する署名運動を開始しています。先にも述べた通り、『ポケモンGO』は、おそらく人類史の中で、もっとも屋外で遊ばれたゲームであり、開発者も予測していなかった事態が続発しているのだと思います。ただ、こうした問題の対策も、徐々に見出されていくのではないでしょうか?

■ゲーム研究者から見た『ポケモンGO』の新しさと魅力
三つあります。プレイヤーが外に出て遊ぶことを促すゲームであること、健全なビジネスモデル(売上を得るしくみ)を提示していること、さまざまな活用が見込めることです。

まず、『ポケモンGO』のプレイヤーは、街を歩いてポケモンやアイテムを集めることを通して、身体を動かす楽しさを感じたり、他の人たちと交流したり、今まで知らなかった地元のお店や神社、自然などを発見することができます。運動の楽しさや現実の美しさ、社会的なつながりの楽しさに(再び)気づかせてくれる点が、このゲームの大きな魅力ですね。

二つ目の魅力が、ビジネスの健全さです。これまで日本のソーシャルゲーム会社は、レアなキャラクターをランダムで入手できる「ガチャ」というしくみを使って、ゲームに熱中する少数のプレイヤーに多額のお金を払ってもらうビジネスをしており、これが社会的に大きな問題になってきました。これに対して『ポケモンGO』は、ガチャのしくみがないので、プレイヤーはレアなポケモンを得るために歩き回る必要があります。子どもが安全に楽しめるゲームや、多くのプレイヤーに少しずつお金を払ってもらうビジネスモデルを作るという、ポケモン社と任天堂の哲学が、『ポケモンGO』には活かされています。

三つ目の魅力は、さまざまな活用が見込める点です。すでに、日本や米国、ドイツなどでは、飲食店や商店街がポケモンを集めるアイテムを使って売上を増やしたり、医療の現場で使われたり、レアなポケモンがいる場所等へのツアーなどが実施されています。社会的・経済的にさまざまに活用できる可能性を秘めている点も、『ポケモンGO』の魅力ですね。

■ブームの見通し
無料で遊べるゲームは、一般的に、ほとんどの人が途中でプレイをやめるものなので、飽きる人が出ることはきわめて自然です。ただ、プレイヤー数が巨大なので、「飽きた」という人の声が、他のゲームより目立ちやすいのかもしれません。

また、『ポケモンGO』に関しては、開発会社の方が、多くの人びとに遊んでもらうためにあえてシンプルなゲームにした、と語られています。しかし、今後、ポケモンを交換したり、プレイヤー間でコミュニケーションを行う機能や、初代『ポケモン』以降の作品のポケモンが実装されていくようなので、現在のような爆発的ブームは落ち着くものの、今後数年間、一定の人気が持続して、数千万人単位の巨大なプレイヤーコミュニティが、維持されていくのではないでしょうか? 

さらに、『ポケモンGO』の開発会社であるナイアンテックの前作『イングレス』で起きたように、開発会社が提供する遊び方だけでなく、プレイヤー主導での創造的な遊び方、新しい楽しみ方、盛り上がりが生まれてくると思います。ゲーム研究者として、またプレイヤーの一人として、今後の動きを私もワクワクしながら見ていきたいと思います!

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