Mia Consalvoの『Cheating: Gaining Advantage in Videogames』(2007, The MIT Press)は、コンピューターゲームのプレイにおける「チート(Cheating)」、つまり、ズルや不正行為に関する研究。
https://mitpress.mit.edu/books/cheating
インタビュー、MMORPG(FF11)のバーチャル世界での参与観察、文献・Web情報(プレイヤーのWiki、掲示板への書き込みなど)調査と、「ゲーミング資本」「パラテクスト(テクストについての補助的な言説。本書では、ゲームの攻略情報やMod Chipなど)といった概念を用いて、次のような問いを探究しています。
・ゲーム内課題の達成を助けてくれるチートの役割
・チートに関する周辺産業の歴史
・チートに携わる企業とゲーム企業の対立・協力関係の歴史
・プレイヤーによるチートの定義(何が「チート」と定義されるか)
・チート使用に対するプレイヤーの意味づけと行為
・スタンドアロンゲームとオンラインゲームにおけるチートの違い
・ゲーム内での倫理と日常生活の倫理の関係
調査によって収集した豊富なデータと、ゲーム学、メディア研究、社会学などのレビューに基き、ゲームプレイとチート、産業、倫理の関係について分析しています。日本には類書がなく、英語圏のゲームプレイ研究の厚みを感じる一冊。
著者のMia Consalvoは、カナダのメディア・ゲーム研究者。ケベック州モントリオールにあるコンコルディア大学の教授で、ゲーム研究の国際学会DiGRAの現会長。世界のゲーム産業に対する日本の影響についても分析しているようです。
http://coms.concordia.ca/faculty/consalvo.html
目次は次の通り。誤訳はご容赦を。
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謝辞
はじめに: チートをすべきか、しないべきか: これは問題になるか?
第1部 ゲームにおけるチートの文化史
第1章 市場を創る: Easter EggとSecret Agent ※Easter Egg: ゲーム内の隠しメッセージ
第2章 ガイダンスは独立する: 攻略ガイド出版社の誕生
第3章 Genies、Sharks、Chips: チートの技術的側面 ※改造ツールの歴史
第2部 ゲームプレイヤー
第4章 アドバンテージを得ること: いかにビデオゲームプレイヤーはチートを定義し扱うか
第5章 チートをする人々
第6章 チンピラ(Punks)をつかまえ、プレイヤーを取り締まること: 反チート産業
第7章 魔法使いの物語: チートとヴァナ・ディール
第3部 資本とゲーム倫理
第8章 パラテクストを利用すること: ゲームプレイ、倫理、日常生活
注
参考文献
付録
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