本務先の東北学院大学教養学部人間科学科では、卒業論文作成が必修となっていますが、今年度のゼミ生が書いた卒業論文「Mr.Childrenの歌詞の年代別特徴とメンバーの心境」が、学科長賞(学科で最も評価された卒業論文)に選ばれました。
本論文は、長年支持されてきた日本人アーティストの楽曲に注目して、時代ごとの歌詞の特徴とアーティストの心境との関係を考察したものです。具体的には、2022年でデビュー30周年となるMr.Childrenの楽曲の歌詞を、テキストマイニングと呼ばれる方法によって分析し、彼らの魅力の1つである歌詞の特徴の時代的変化が、バンドの生活史における転機(職業的成功、結婚と離婚、老い)によって説明できることを、3つの仮説の検証に基づいて明らかにしています。
著者は、1992年から2020年までのMr.Childrenの全233曲の歌詞、曲名、アルバム名、発売年等のデータをExcel上で入力し、テキストマイニングソフトKH Coderを用いて得られた、歌詞の頻出語、特徴語、出現単語の文脈、単語の共起関係、座標平面で示された単語と時代の対応関係などの分析結果を、本文(及び付録)で簡潔かつ説得的に論述しています。また、歌詞分析に関する社会学と情報学の先行研究とジャーナリストの文献の幅広い解読と批判的論考に基づき、歌詞分析にとどまることなく、歌詞の特徴と、アーティストの心情、生活史、さらにはよりマクロな時代的背景と結びつけた考察を行っています。分析・考察の双方から見て、メディア文化に関する卒業論文に関心を持つ学部・学科の学生たちが参照できる論文であり、優秀論文として推薦する理由を有していると思われたため、優秀論文として推薦したところ、上記の賞を受賞しました。
卒論中でも書かれているのですが、音楽とタイアップしたテレビドラマ番組やCMなどの影響、音楽における歌詞以外の要素(音色など)は本論文では分析されておらず、利用資料にも検討の余地があります。また、歌詞に対する社会的文脈の影響については、社会学理論(ライフコース論など)に基づいたより深い考察が可能だったと思われます。ただし、学部の卒業論文としては、論文の内容・形式という観点から見て十分に優れたものと思います。
学業にも卒論にも真摯に取り組んでいた学生だったので、4年間の学科での学習とゼミでの研究の成果が、高く評価されたことを大変嬉しく思います。
(ちなみに、少し前の投稿で書いた、卒業前に会いに来てくれた学生の論文です。)
この卒論は、『デジタルゲーム研究入門』などに基づく教育の結果であると考えることができます。ゲーム(をはじめとするメディア文化)の論文作成方法を明文化したことの成果が、着実に現れてきているようです。
また、これから卒論を書く学生の中にもボカロ曲やジャニーズの曲の歌詞分析をしたいという学生がいるので、この卒業論文の成果を、後輩の学生が継承しさらに発展させていけるように、指導していきたいと思います。また、自分自身の研究指導力も高めていきたいです。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。